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田中千足のコラム 第4回

メダカ君、またまた襲撃される


悲しみは春の訪れとともにやってきた。31日玄関を開けて、新聞を取りに出た私が見たものはなんとも恐ろしい光景だった。来ないだろうと高をくくっていたのに、ものの見事にアライグマに襲撃された惨劇の跡だった。鉢は完全にひっくり返され、冬眠中のメダカたちは跡形もなく喰われてしまっている。右側の大きな甕には9匹の金魚がいた。メダカと違って2月から水面まで上がってきてまいた餌を元気よく食べてくれていた。コーナンで買った金魚だから、そんな高価なものではないけれど、甕に近づくとすぐあがってきてくれて、よしよしゴハンをやるぞと餌を巻き、その食べっぷりを見て心和ませていた。そんな可愛い金魚が9匹残らずいなくなったのだ。甕の周りの白いものは、包装に使う発泡スチロールの薄いフィルムを防寒用にぐるぐる巻いたものだ。汚らしい無残な爪痕が見て取れる。

前号に載せたアライグマの襲撃は去年の8月27日のもの。それから指をくわえて傍観していたわけではない。113日にも別のツボが襲われた。5本の指の手形か足形が「犯人はアライグマ」の動かぬ証拠だ。鉢を置く金属製の棚の側面には防寒用のビニールシートを張っている。前面に百均で買ったメッシュパネル4枚を取り付ける。餌をやらないといけないから開閉式に取り付ける。側面にも1枚ずつ置いておく。前面にはスダレを垂らし、レンガを重石にしておく。棚に入れていない壺や鉢には何枚かの木の蓋をする。

 ということで12月、1月の冬は乗り切り、2月になり氷も張らなくなったころから、水底の土の中に潜って冬眠していたメダカ君たちも昼間にはその朝まいた餌を食べてくれるようだし、金魚たちはもっと旺盛な食欲をしめしてくれる。昼間の間は前面のスダレを上げ、鉢に被せる木の覆いをとってやる。抜かりなく夕方にはスダレを下ろし、木の蓋をしていたのだが、メダカ君たちが無事生活しているのに安心してしまい、2月の終わりには1日中スダレを上げっぱなしにしていたのだ。

そうして悪夢のような31日がやってきたのだ。犯人がアライグマである証拠はタイルに残る5本指の足形、壺の口のところに引っかかる白と黒のまだら模様の毛だ。

32日にも襲われた。37日にも襲われた。これで500匹あまりのメダカ君たち、9匹の金魚はすべていなくなってしまった。

復讐の鬼と化した私は、アライグマ捕獲作戦に取り掛かるつもりだ。

     



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