田中千足のコラム 第7回 狛犬ワールドにようこそ 1
為那都比古神社の狛犬たち
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狛犬というのは神社の参道や本殿・拝殿の前に鎮座している石像でしょう、よく見かけますよ。犬というより獅子という方がいいみたいですね。狛犬はいつも一対で、一方は口を開ける阿形、もう一方は口を結ぶ吽形ですよね。多分神社の守り神なんでしょう。 ついこの間まで、私はこのように思っていました。お寺の仁王像に対して、神社の狛犬でしょうと。 ところが狛犬紹介の本を何冊か読むと、狛犬の世界はそんな単純なものではない、ワクワクドキドキの狛犬ワールドがあり、奥深い歴史や意味も隠されていそうなのです。
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拝殿の前には前後2対の狛犬が鎮座しています。手前にあるのは、口が下がっていてゆるキャラです。髪や髭もそして垂れた耳もどれも可愛いですね。前肢も筋肉が見えません。
天保2年3月西村重左エ門さんらが造立とあります。大坂町奉行が安治川を浚渫して、その土砂で天保山を築造し始めた年ですね。 |
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後ろにあるすなわち拝殿に近い方にある狛犬は、先の二つの狛犬の中間的な姿形ですね。拝殿のすぐ前にあるので、この狛犬が一番格上なのでしょうか。 明治25年4月造立とあります。日清戦争の始まる2年前ですから、戦勝記念に奉納されたというのではないようです。古都京都では蹴上の水力発電所が開業し、京都の復興に大いに役立った年です。 |
さて為那都比古神社には摂社として天満宮がありますが、この拝殿前には狛犬はいません。 | |
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ところが神門の横に神輿庫があるのですが、その前に6番目の狛犬がいます。これもだいぶ古そうですね。ゆるキャラとまではいかないものの決して強面系ではありません。天保10年7月造立とあります。この年には蛮社の獄で渡辺崋山・高野長英が逮捕されています。 天保年間に2対の狛犬があったわけです。推測ですが、この2対の狛犬が、門前及び拝殿前に鎮座していたものが、後から奉納された狛犬にその座を奪われ、それぞれ今の位置に遷座したのではないでしょうか。 |
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