キンモクセイの香り
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令和6年4月より内藤先生の後任として主にメンタル診察を担当させていただいています。令和4年度1年間箕面市立老健の管理医師をしていましたので、懐かしいお方に再会することができました。さらに4年前までやっていた箕面駅前の田中メンタルクリニックの時の患者様にもお会いすることもできています。ただ時の流れは残酷なもので、私のことなど知らないよという返事もあり、ちょっと寂しい気分になったりもします。
当たり前のことですが環境はその人のありように大きく影響します。私の知っている入所者の皆さんが、ほぼほぼ穏やかで、大きな不満を口にされないことに、小さな驚きを感じ、安心もしました。
さて私はこの10月で78歳になります。私の子供の頃というのは昭和30年代の初めであり、誕生日のお祝いとかお友達を呼んでの誕生パーティーなどは夢のまた夢でした。そんな時キンモクセイのあの芳醇な香りが漂ってきました。子どもの私には、まるで私の誕生日を祝う最高級のプレゼントのように感じられました。キンモクセイの香りは素敵だと私の脳に刷り込まれたようです。
大学で物理学科に進んでいた私は、秋、キンモクセイの香るなか、前を行く物理学科唯一の女子学生で学生の間でマドンナと称せられた人の後ろ姿に心躍らせたことを思い出します。キンモクセイの香りのパワーですね。
美しかった彼女は今でも美しく、半年ごとぐらいにお互いの消息を報告し合っています。
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