退任のご挨拶
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本年3月31日をもちまして1年間勤めてまいりました施設管理者を退任させていただきます。
1年間という短い間でしたが私にとって大層勉強になることばかりで、これから一精神科医として、箕面を中心とした地域の精神医療、障害者福祉、高齢者福祉に力を入れて行こうと思っていますが、この1年間の経験はとても貴重なものと思っています。
入通所しておられる利用者さんは「生活のしづらさ」を持ておられるわけで、その「生活のしづらさ」をいかに減らし、その方の人生はその人らしく生きてこれたと振り返れるようにするかを全スタッフともに心がけてきた積りです。
「生活のしづらさ」を改善する支援はとてもとても一筋縄ではいきません。うまくいかない時、いったい私はどれだけの力量を持っているのかと情けなくなるものでした。そんな私を勇気づけていただいたのはほかでもない利用者さんのキラッと光る人生の一コマの話、まあ何という大変な出来事を潜り抜けてこられたのかという話、あるいはさりげないやり取りの中でこちらを気遣う労いの言葉などなどです。
さらに思いがけない出会いもありました。その方は京都の嵐山の近くに住んでおられたということなので、ある日の回診の時に聞いてみました。
「私は桂高校の卒業ですが、嵐山も学区内に入っていましたね。」
「私、桂高校の第1期の卒業生です。」
「エッー、私の大先輩でいらっしゃる!1年生から入ったんですか?」
「私、旧制の(京都)府立(京都)第5中学校に行ってたんです。上桂の今は桂中学がある所に通ってたんです。阪急嵐山線の松尾から上桂まで電車乗ってね。」「学制が変わり第5中はなくなり、新制桂高校に行きなさいと。今度は桂まで電車になりました。」
桂高校の大先輩に出会えたお蔭で、桂高校は府立ナンバー中学の後継ではなく、その前身は向陽農業学校だというちょっとした負い目を払しょくできたのです。確かに今は耳が遠くて少し近時記憶は怪しくなっておられますが、なんと私に勇気を与える情報を教えて下さったのです。
皆様、有難うございました。
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